情熱大陸に出演の山本直洋(やまもとなおひろ)さんは、モーターパラグライダーによる空撮を得意とするカメラマンです。
子供の頃から、空を飛びたい一心で成長されて来たと言います。
そして、ご両親はそんな直弘さんの発想を自由にできるように努めて育ててくれたとか。
危険と隣り合わせのモーターパラグライダーに乗っての撮影を生業にした経緯と、自由に育ったからこそ自分の娘の成長も同じように見守っている子育てに注目して調べてみました。
1978年東京生まれ
ニューヨークのフォトスタジオに勤務後ファッションフォトグラファー、風景写真家に師事。
2008年に独立し、フリーランスフォトグラファーとして活動する。
モーターパラグライダーによる空撮を得意とし「Earthscape」と題して”地球を感じる写真”をテーマに作品制作を行う。
スカイダイビングやウィングスーツ、ドローンによる空撮も行う。
写真以外に動画撮影も行い、TV番組、映画、CM用空撮なども手がける。
現在世界七大陸最高峰を全てモーターパラグライダーで飛行しながら空撮するプロジェクト「Above the Seven Summits Project」に挑戦。
山本さんの子育て
娘さんはパパが大好き
情熱大陸の取材中、スタッフが一番驚かされたのは、子煩悩な山本さんの姿だったそうです。
10歳の娘から抱っこをせがまれる場面を何度も目撃したとか。
スタッフもきっと山本さんと同じ世代だったり、同じ10歳の子供を持っていたかもしれません。
10歳といえば、小学4年生。
公立小学校では、1/2成人式なんて行事があったりします。
パパが大好きだとしても、父親に抱っこを要求したり、へばりついているなんてそうそうないと思います。
きっとスタッフの方々も羨ましく思ったのではないでしょうか?
そして山本さんの娘さんと接するときの表情はいつも優しさに包まれている。
ただでさえ、危険な仕事。
命懸けの挑戦に出かける山本さんに、「行ってほしくない」と本音をぶつける娘との間には、父と娘の関係の良さがまざまざと感じさせてくれます。
娘さんの夢に対して
山本さんは、娘さんには
夢を否定するのは、一切してない。何かなりたいんだったら「いいね!」って言って「がんばって!」って言います。
やりたいことは何でもいいから、本当にやらせてあげたい。
僕が空撮をしているから「飛んでもらいたい」とか「写真家になってもらいたい」とか、特にそうも思っていませんし。
ただ「好きなことをやってもらいたいなぁ」とは思います。
良いお父さんですね。
子供の頃、または青年期になって夢はどんどん変わっていくと思いますが、親はその時現実的な采配をするのではなく、『ただ、応援してるよ!』っという声かけをしてあげられてる親はどのくらいいらっしゃるでしょうか?
実は、これなかなか言えないんですよね〜。
幼稚園くらいまでは全面的に受け入れるのに、小学生になると子供の夢に大人の経験を通した采配で、潰す発言になってしまう時もあります。
山本さんの応援があるから、娘さんもたくさんの夢を持っているのではないでしょうか?
応援してくれる人は無条件に大好きになりますね。
ずっとそのまま、子供とはいえ、個人の考え方に踏み込まない見守りをしてもらえた娘さんがどんな風に生きていくのか?
それも楽しみですね。
なぜ空撮写真家に?
「今の地球の状態を記録しておくことで、
後世に伝えることができる貴重な映像になる」
自ら飛んで鳥の目線から撮影することで、写真を見る人に自分も飛んでいるような感覚を味わってもらえるような作品づくりを心がけていると言います。
世界七大陸最高峰すべての上空をモーターパラグライダーで飛行することに成功すれば世界初の記録となります。
ただ、個人的な想いとしては世界初の記録を達成することよりも、写真家として今の地球の自然をしっかりと写真や映像に残すことが重要だと考えてもいます。
温暖化の影響で、キリマンジャロやエベレストの氷河等は年々減ってきており、数年後にはなくなってしまうのではないかと言われていますから、
今の地球の状態を記録しておくことで、後世に伝えることができる貴重な映像になると思って撮影されています。
そしてそれは衛星写真のような単なる記録画像ではなく、自分自身が身体で地球を感じながらシャッターを切ることで、その場の空気感や自分の感情を込めた写真作品となる。
その作品を見た人が、自分も飛びながら地球を感じているような感覚になれるような作品を作りたいと思っているそうです。
大人になり写真をはじめた頃にモーターパラグライダーの存在を知り、空から写真を撮ったら面白いのではないかと思い、空撮写真家を目指すことにしたそう。
はじめてパラグライダーで飛んだ時に見た景色が子供の頃に見た夢の映像とリンクし、これをやるために自分は生まれたんだ!と感じたと言います。
筆者は長年思い描いてきた壮大な夢とリンクした瞬間を経験していないので、リンクした瞬間の感動をその通りに想像できてないでしょうが、山本さんの思いを馳せると感動します。
モーターパラグライダーはどこまで飛べるのか?
モーターパラグライダーとは、背中にエンジンを背負いパラグライダーを翼として飛行するスカイスポーツです。
普通のパラグライダーはもともと登山家が山頂から楽に下山する方法を考えて生まれたスポーツと言われていて、基本的には山や丘など高い場所から飛び立ち、上昇気流を捕まえながら飛行します。
上昇気流がなければ高いところから下りるだけとなります。
モーターパラグライダーは動力となるエンジンを使用するため高い場所から飛ぶ必要はなく、平地から飛び立つことができます。
上昇気流を捕まえないと高度を上げられない普通のパラグライダーと違い、エンジンの力で高度を上げることができます。
風を待たなくていいのは、時間的スケジュールも立てやすいですね。
離陸して高度を上げていくことができるため、ある程度の広さがある場所であればどこでも飛ぶことができます。(もちろん地形や風向きにもよります)
例えばキリマンジャロの標高は5,895mあるため、上から空撮するためには6,000mまで上がる必要があります。
高高度では空気が薄くなるため通常のモーターパラグライダーエンジンではそこまで上がることはできません。
なので空気が薄くてもパワーが出るようにエンジンを改造し、さらに上昇気流をうまく利用する技術が必要となります。
ドローンはその場で垂直に上昇したり、空中で停止したりバックしたり、パラグライダーでは絶対にできない動きができます。
動画では特にドローンでしか撮れない映像というものがあり、空撮機材としてはとても優秀なツール。
ただ、どれだけ素晴らしい映像をドローンで撮影しても、モニター越しで見る景色は実際に自分の目で見る景色には敵わないと言います。
人の目と感情で見た絵は、何とも言えない語りかける絵になると思います。
ドローンは美しい写真や映像を撮ることはできる。
しかし、そこに撮影者の感情や上空の空気感を入れ込むことはできないと。
さらに現在のドローンは6,000mまで上がり撮影することは性能的にできないそうです。
実機のヘリコプターで救助用等特殊な機体は6,500mほどまで上がるものもありますが、通常のヘリコプターやセスナは基本的に4,000m以上あがることは困難。
特殊な高性能セスナやジェットエンジンの航空機であればそれ以上あがることは可能ですが、機外に出て撮影することは難しく、機内から窓越しに撮ることになり撮影には向いていません。
なのでここでモーターパラグライダーの自由な離陸と、動き、高度な技術搭載の山本さん専用のモーターパラグライダーが出来上がったのですね。
一般のヘリコプターやセスナより、高高度に飛べるなら、今後救助活動にも使える(重量を運べる)モーターパラグライダーができれば、ヘリコプターやセスナより安価で救助第一段階には役に立つのではないでしょうか?
この9月、山本さんはプロジェクトの第二弾としてオーストラリア大陸最高峰コジオスコの空撮に挑みました。
山で七大陸最高峰を達成することはそれほど珍しくなくなってきました。
今やエベレストでも頂上で渋滞がおきるほどです。
世界中の登山家やお金持ちたちの趣味が、渋滞を起こしているそうです。
しかし、モーターパラグライダーで飛んでその高さまで上がるのも、足で上がる事と変わらず、並大抵のことではなく高い技術力と知識、そして冒険心が必要となります。
自力で登るのと違い、パラグライダーの場合は休憩できないですよね。
モーターがあるとはいえ、変わりやすい山の気象を秒で読みながら、操作するわけですし、登山と違って一人孤独です。
自分の判断一つで高高度な空の中で操作していく‥。
3,000m以上の高度に上がって撮影をしようとすると、想像以上に過酷な条件となります。
実際にやってみるとその難しさを実感し、今まで誰も七大陸最高峰全てを飛ぶというチャレンジをやっていない理由にもなるでしょう。
それでも、
昔一人だけ、イギリスの冒険家がエベレストの上までモーターパラグライダーで飛んでいくことに成功しているそうです。
ところが当時計器類が全て凍ってしまい、正式な記録として残っておらず、当然写真も残っていません。
しかし、非公式でもエベレストの上まで行ったことがある人がいるということは、いかに困難でも不可能ではないということが証明され、きっといつか制覇されるのではないでしょうか。
その後10年間誰もモーターパラグライダーでエベレスト上空まで行った者はおらず、世界七大陸最高峰全てを空撮した例は非公式な記録を入れても前例はないそうです。
空から生身で撮影するということ。
モーターパラグライダーでの空撮を行う時、飛ぶ前にある程度どのような写真を撮ろうか頭の中で考えてから飛びたつが、しかし、実際飛んでみると地上では見えなかった部分が見えてきて思っていた以上の写真が撮れることがよくあるそうです。
特に雲や太陽の光などは飛んでいる最中にどんどん変わっていき、ほんの一瞬しか見ることのできない景色が現れたりする。
そういうところにぱっとカメラを向けてフレーミングして写真を撮ることはドローンにはできません。
さらに、自分で飛ぶことでその場の風や温度を肌で感じることができます。
自分自身が感動し、地球を感じながら写真を撮ることでドローンのように機械的に撮ったものとは違った自分の感情を込めた写真が撮れるそうです。
ただ、モーターパラグライダーでの空撮で一番苦労するのは気象条件。
雨や雪が降っている時は当然飛べない。
晴れていても風が強すぎたり風向きが悪かったりすると飛べません。
地上では風が穏やかでも上空では強風がふいていることもよくあります。
どのくらいの高度でどの向きの風がどのくらいの強さでふいているのか、さらに地形を見てどこを飛ぶと危険なのかなどを判断する能力が必要になります。
その判断力が十分でない頃には少々危険な経験をしたこともあるそうです。
両親から受けた教育
ご両親についてはとにかく、自由にさせてくれたと強調します。
別にこんな風になることを狙って育てられたっていうのは全くなく。
でも「やりたいことをやる」ことについては、特に制限なくやらせてもらえたそうです。
なかでも大きかったのは、中学生の時に親の仕事でノルウェーに住んだこと。
ノルウェーにいる間に、家族で、田舎の自然のあるところに旅行に行ったりして、すごい景色をたくさん見てきたそう。
その時の経験というのが、すごく大きくて自然を満喫したのですね。
山本さんは「地球を感じる」をテーマに空撮をしていて、その想いを持つようになるのもこのノルウェー経験があったからだそうです。
中学2年生の時のエピソードでを発表されています。
家族一緒にノルウェー南西部のリーセフィヨルドに遊びに行った時、プレケストーレンというフィヨルドの切り立った崖があり、岩の上まで登っていけるルートがある。
大体の観光客はそこまで行って帰るが、山下少年はもっと先まで、親を置いたままひとりで勝手に登っていった。
山の上から見た景色に、大きな感動を覚え、そこでしばらく、のんびりひとりで横になっていたそうです。
戻ったら、両親はすごい勢いで息子を探していて、お母様は泣いて「どこ行ってたの?岩の割れ目に落ちたんじゃないかって心配したのよ!」っと怒られたそうです。
ですがその時、山本少年は「僕は地球を見てきた」って答えたとか。
空を飛ぶ鷲のような感覚でフィヨルドを眺めたのでしょうか?
その時の経験が今の写真家としてのテーマ「地球を感じる写真」に繋がってるのだと言います。
危険なこと以外は、何をするにも見守るに徹した教育だったのですね。
まとめ
自由に開放感の中で育てられた山本直洋さんは、10歳の娘さんも自分が両親にしてもらったと同じように育て、大の仲良し親子です。
高高度な場所にも上がれる特別なモーターパラグライダーで、空撮写真家として活動されている山本直洋さんは、いつかまだ誰も再挑戦していない七大陸最高峰全てを飛ぶというチャレンジをやってのけるでしょうね。
その時を楽しみにこれからも注目していきたいと思います。
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